撮影・録画技術
グリーンバックやブルーバックって何?クロマキー合成の方法やコツなども紹介
動画の撮影や配信時に、グリーンバックやブルーバックというものを用いてクロマキー合成を行うことがあります。しかし、グリーンバック(ブルーバック)とは一体何なのかや、どのようにして使うのかがわからない方もいるのではないでしょうか。
今回は、グリーンバックやブルーバック、クロマキー合成について解説するとともに、効果的な撮影方法を紹介します。
合成のやり方やおすすめの動画編集ソフトなども紹介するので、高度なテクニックを使ってよりクオリティの高い動画を制作したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
グリーンバック/ブルーバックとは|クロマキー合成に使用
グリーンバックやブルーバックとは、動画などの撮影時に背景として用いられるグリーンやブルーのスクリーンのことです。「グリーンスクリーン」や「ブルースクリーン」とも呼ばれます。
このグリーンやブルーの背景の部分を別の画像や動画に合成することができ、合成する手法を「グリーンバック(ブルーバック)合成」または「クロマキー合成」といいます。
クロマキー合成が使われるシーンの一例として、身近なものでは、気象予報ニュースが挙げられるでしょう。実際のスタジオではグリーンバックの前で撮影され、気象予報図が合成されて放映されているのです。
グリーンバックとブルーバックの違い・使い分け
ここでは、グリーンバックとブルーバックの二者にはどのような違いがあり、どう使い分けるのかを解説します。
周りの明るさ(光量)
1つは周囲の光量による使い分けです。グリーンスクリーンはブルースクリーンより光度が高く、昼間の撮影に向いており、ブルースクリーンは色が暗く光の反射量が少ないため、夜の撮影に向いているといわれています。
グリーンはライティングの必要な光量がブルーより少ないため、背景を大きく取りたい場合にはグリーンのほうが有利であるとされているのです。
また、グリーンのほうがノイズが少ないともいわれています。
被写体の色
もう1つは、被写体の色です。学生時代に美術の授業で「色相環」について学んだのではないでしょうか。色相環図では、赤・オレンジ・黄色…と合計12色が円になった状態で表されますが、ある色のちょうど反対側に位置する色を「補色」と呼びます。
そこで、合成用の背景に人間の肌カラーの補色であるブルーやグリーンを使用するのです。補色を使用することによって、合成した際に肌の色をきれいに残すことができます。
なお、ブルーの補色は黄色、グリーンの補色はピンク。欧米でグリーンバックが主流のため、日本でもグリーンバックが使われる機会が多いです。グリーンバックのほうがサポートできる動画編集ソフトも多いので、汎用性が高いといえるでしょう。
クロマキー合成とは?
クロマキー合成とは、「キーイング」といわれる切り抜きタイプの合成方法の1種。色の違いを利用して特定の色を透明にし、別の画像や動画をはめ込む技術です。
実際に行くことのできないロケ地や、現実にはあり得ないようなシチュエーションを、合成によって再現することが可能。前述したようなブルーバックやグリーンバックを、透明にしたい(別の動画をはめ込みたい)部分に使用して撮影します。
TV局のような企業だけでなくオンラインで配信する一般の方も増えており、動画配信や実況中継など多様なシーンで使われるようになってきました。
グリーンバック(ブルーバック)でできること
つづいて、グリーンやブルーの背景を使ってどのようなことができるかという例を見てみましょう。
動画制作
1つ目は、ワンランク上の動画制作です。グリーンバックやブルーバックがあれば、社内に居ながらにして、まるで外で撮影したかのような合成動画を制作したり配信したりすることができます。よりクオリティの高い動画を作りたいときにおすすめです。
Web会議などの背景合成
2つ目は、オンラインミーティングなどの背景です。グリーンバックやブルーバックは、ヴァーチャル背景の合成にも役立ちます。室内の映したくないものを隠しながら、別の画像などを当て込むことが可能です。
グリーンバックでクロマキー合成をするときに必要なもの
つづいて、クロマキー合成をする際に必要なものを紹介しましょう。
撮影用カメラ
まず、動画を撮影するためのカメラが必要です。普段から使っているカメラがあれば、そのまま使うことができるので、特にクロマキー合成専用のカメラを用意する必要はありません。
なお、被写体に動きがある場合は「モーションブラー」と呼ばれる動きを感じるブレを軽減するため、シャッタースピードを速めて撮影しましょう。モーションブラーが残ると合成した際にきれいにグリーンが切り取れず、動画が乱れてしまう場合があります。
グリーンバック(ブルーバック)用のスクリーン
クロマキー合成においてもっとも重要といえる、背景用のグリーンバックやブルーバックも用意しましょう。布状・スクリーン・折りたたみ式などのタイプがあります。
布の場合は設置用のスタンドなども必要です。また、出したり片づけたりと使用にやや手間がかかるでしょう。スクリーンタイプは引き出すだけで使えて、しまうときも簡単です。折りたたみ式は持ち運びしやすく、吊るしたり立てかけたりとさまざまな使い方ができます。
照明(ライト)
クロマキー合成の撮影時には、照明(ライティング)は欠かせません。色の違いを鮮明にすることで、加工時に動画をきれいに切り抜きやすくなります。
やわらかい光源のライトを用意し、グリーンバックやブルーバックに影ができないよう全体にまんべんなく光を当てて、上手にライティングを行いましょう。
グリーンバック(ブルーバック)の選び方
自分でグリーンバックやブルーバックを用意する場合は、どんな点をチェックして選べばいいのでしょうか。グリーンバックを選ぶときのポイントについて解説します。
1.サイズ
グリーンバックのサイズは、被写体の動画に映したい部分がきちんと収まる大きさであることが重要です。サイズが大きければ、動きの大きな動画も編集しやすいでしょう。
ただし、大きすぎると持ち運びにくくなる点には注意が必要。幅や高さなど、撮影する場所のキャパシティも考慮しましょう。
2.素材
グリーンバックの素材にも目を向けてみましょう。シワや汚れなどがあると影ができてしまい、きれいに合成できないことがあるので、シワのつきにくいものやアイロンをかけられるものがよいでしょう。
ポリエステル素材で、アイロン可のものを選ぶのがおすすめです。また、万が一汚れたときのために、洗濯できるかどうかもチェックしておきましょう。
3.収納性
使う場面があちこちあって持ち運ぶ機会が多い場合や、片づけるスペースが広くない場合などは、持ち歩きやすさや収納面での使い勝手も確認しましょう。軽量かつ、巻いたりたたんだりしてコンパクトにまとめられるタイプが便利です。
4.設置方法
前項とも関連しますが、使うシーンにあわせてグリーンバック(ブルーバック)の設置方法で選ぶことも大切です。
広げて自立させて使う屏風タイプ、壁や天井などに取り付けて据え置きできる壁掛けタイプ、椅子の背もたれに設置できるバンドタイプ、好きな場所に立てられるスタンドタイプなどがあります。
グリーンバックでのクロマキー合成のやり方
ここからは、実際にグリーンバックやブルーバックを使ってクロマキー合成をするときの手順の一例を解説します。
1.合成のための素材を用意
まず、合成に必要なものをそろえます。グリーンバックやブルーバックで撮影された動画を用意するほか、合成する箇所にはめ込む画像や映像も必要です。なお、グリーンバックやブルーバックはインターネットなどで購入できます。
2.動画編集ソフトで合成
次に、クロマキー合成ができる動画編集ソフトを使って、実際に合成を実行します。ソフトによって使い方や機能が異なるので、それぞれのソフトに合った操作を行いましょう。
うまく切り抜けていない部分ができたり、逆に切り抜かれすぎたりして映像が不自然になることがあるので、細かい部分を調整できるものがおすすめです。
3.出力して保存
合成できたら再生して問題がないか見直し、よければデータを書き出して保存します。これで操作は完了です。
クロマキー合成用の撮影をするコツ
ここからは、実際にクロマキー合成用の撮影をするときのポイントを解説していきましょう。
スクリーンはシワができないように
シワやたるみが寄るとその部分が影になってしまい、動画の編集時にきれいにキーイングができない(切り抜けない)ことがあります。アイロンOKの素材ならアイロンをかけておく、設置するときにピンと張って伸ばすなどして、シワができないよう工夫しましょう。
被写体の色に注意
撮影をする際、被写体の色には注意が必要です。どういうことに気をつければいいのかというと、グリーンやブルーなど、背景と同じ系統の色は避けることと、光沢感あるシルクなどの反射しやすい素材や、透ける衣装も避けたほうがよいでしょう。
失敗例として、黄緑色のとある人気キャラクターが気象予報ニュースに出演した際、グリーンの部分がグリーンバックと一緒に切り抜かれてしまい、キャラクターが透明になって見えなくなったり青く映ったりというアクシデントが発生したことがあります。
細かいパーツは避ける
レースを用いた衣装やアクセサリーなどの細かいパーツは、きれいに切り抜きづらいため着けないほうが無難です。
また、メガネや時計など背景を反射しやすいものも避けたほうがよいでしょう。やむを得ず使用する場合は、被写体の周りを黒や白の板などで囲んで反射を避けるなどの工夫が必要です。
ライティングは複数使用する
照明は複数用意し、被写体とグリーンバックやブルーバックは別々にライティングしましょう。背景の映り具合にムラができないよう均一に光が当たるようにし、被写体をグリーンバックから離して被写体の影を映り込みにくくします。
照明が強すぎると背景色が被写体に跳ね返ってムラが発生してしまうこともあるため、明るさの度合いも考慮しましょう。やわらかい光源の照明を使うのがおすすめです。上手にライティングを行うことで、合成時にきれいにキーイングができます。
カメラワークは最小限に
カメラワークは必要最低限に抑えましょう。
カメラを固定して撮影することが理想ですが、難しい場合は背景や床にトラッキングマーク(動きを追うためのポイント)を配置します。カメラをあまり大きく動かしてしまうと、被写体がブレてうまく切り抜けなくなるので注意が必要です。
シャッタースピードも速めに設定し、モーションブラー(カメラブレ)を極力抑えるようにしましょう。
グリーンバックでのクロマキー合成におすすめの動画編集ソフト
最後に、クロマキー合成ができるおすすめの動画編集ソフトを3つ紹介します。
Adobe After Effects
Adobeが提供する動画編集ソフト「After Effects」では、クロマキー合成のほか、多彩なエフェクトやグラフィックのアニメーション化、モーショングラフィックスなどにより、高度な映像を制作することができます。
高性能な反面、プロ仕様のソフトのため複雑なインターフェイスであることや、グラフィックボードを搭載しているようなスペックの高いパソコンが必要な点に注意が必要です。
Power Director
初心者からプロまで簡単に使用できる、操作性に優れた動画編集ソフトです。動画編集の知識がない人も、直感的な操作でクロマキー合成もお手のもの。AI編集機能も多数搭載されており、プロが制作したような動画を簡単に作ることができます。
無料体験版で基本機能をすべてお試しできるので、まずは一度使ってみてはいかがでしょうか。
Filme(フィルミ)
多種多様なテンプレートが用意されているほか、合成時の背景に使える素材が80種類以上搭載されており、手軽にクロマキー合成を実行できます。境界部分の微調整もでき、違和感の少ない映像に仕上げることが可能です。
200種類以上の効果音やBGMも利用できるので、映像のみならずサウンドにもこだわった動画を制作してみましょう。
グリーンバックやブルーバックを使いこなしてレベルの高い映像を配信しよう
グリーンバック(ブルーバック)と呼ばれる背景を使用すると合成動画が作れること、さらに、合成動画を制作するために必要なものやスクリーンの選び方などもお伝えしました。早速グリーンバックを使って合成をしてみたいと感じた方もいらっしゃるかもしれません。
オンライン配信スタジオKOUTENでは、カメラとグリーンバックはもちろんのこと、マイク・スピーカー・ミキサーなどの音響用機材や配信用のPCなど、オンライン配信や撮影に必要な機材はすべて準備しています。
そのため、高額の機材類を自分でわざわざ買い揃える必要はなく、何も持たずに来園しても不自由なく撮影していただけるでしょう。ぜひこの機会にKOUTENの利用を検討してみてはいかがでしょうか。