撮影・録画技術
ロケハンとはどんな意味?必要な準備ややり方も押さえよう
撮影をするにあたって、撮影場所の雰囲気はとても大切です。事前に撮影場所に関する詳しい情報を知っておくことは、撮影を成功に導く第一歩といえるでしょう。
そこで、本番の撮影より前に、あらかじめ撮影場所を確認する「ロケハン」が行われる場合があります。ロケハンの概要や目的、スムーズにロケハンをするための事前準備などを知り、よりよい撮影に役立てましょう。
ロケハンとは撮影に使う場所の下見・下調べのこと
ロケハンは、映画・テレビ・雑誌のような、映像や写真を扱う業界などでよく使用される言葉です。撮影をする場所に実際に出向き、下見や下調べをすることを指します。
たとえば「当日はこの時間、この場所で撮影を行おう」「この場所での撮影は立ち位置はここにしよう」など、撮影本番を想定して調査を行うのです。
事前に下調べをしっかり行うことで、撮影をスムーズに行えるようになります。
ロケハンは「ロケーション・ハンティング」の略称
ロケハンの語源は、和製英語の「ロケーション・ハンティング(Location Hunting)」です。「Location」という単語には、「位置」「意味」「野外の撮影地」などの意味があり、「Hunting」という単語には、「狩り」「追及する」「探索する」などの意味があります。
つまり、ロケーション・ハンティングとは「野外の撮影地を探すこと」を意味し、呼びやすく略された呼称が「ロケハン」なのです。
ロケハンの目的とは
本番の撮影の前には、なぜロケハンが必要なのでしょうか。ロケハンを行う主な目的や理由を理解しておきましょう。
シミュレーション
1つ目はシミュレーションです。撮影日に必要な機材などを考えながら、そのロケーションでどのように撮影を進行させていくかなどのシミュレーションを行うことにより、本番時もスムーズにスケジュールを進められます。
イメージと合うかどうかの確認
2つ目は、イメージの確認です。たとえば夜景がきれい・満天の星空を仰げるなど、ロケハンを行う場所が撮影したいイメージに適しているかどうかのチェックを行います。
なお、その場所のみがよい環境であるだけではなく、撮影場所周辺の雰囲気や環境も確認することが大切です。
起こりうるリスクと対策を練る
3つ目は、本番で起きるかもしれない問題を想定するためです。ロケ地には土地勘がないということも多いため、万が一ゲリラ豪雨が起きたらどうするかなど、特に自然災害へのリスクを先回りして考慮し、対策方法も考えておかなければなりません。
その土地のことに詳しい現地の人に話を聞くのもおすすめです。
スムーズなロケハンに必要な事前準備
スムーズにロケハンを行うためには、事前準備が必要です。そこで、ロケハンを始める前にやっておくべきこと、確認事項などをお伝えします。
1.基本事項を決める|コンセプト・予算
まず、「どんな撮影をしたいのか」というコンセプトを決めることが大切です。漠然としたイメージのままだと、コンセプトに合わない場所を選んでしまう可能性があります。
そこで、企画や構成を練って撮影テーマをしっかり決めることで、シチュエーションに合うロケ地を選びやすくなるのです。コンセプトが決まったら、予算も決めましょう。
2.ロケ地を探す|候補は多めに用意しておこう
コンセプトと予算が決まったら、次はコンセプトに合ったロケ地を探します。ロケ地は1カ所だけでなく、5カ所ほど用意しておくのがおすすめです。
コンセプトにぴったりのロケ地が決まっても、必ずその場所で撮影できるとは限りません。撮影日に先約が入っていたり、そもそも撮影許可が下りなくて撮影できなかったりするケースもあります。そのため、候補は多めに用意しておきましょう。
ロケ地はどう探す?|ロケ地検索・ロケコーディネートなど
ロケ地は以下の方法で探すことができます。
・ロケ地検索サイト
ロケ地検索サイトとは、土地・施設・店舗などの選択肢からロケ地を検索できるサイトです。ロケ地の雰囲気を画像で確認したり、使用条件や料金を調査したりすることができます。
・ロケコーディネート
ロケコーディネートとは、ロケ地を検索するだけでなく、撮影するまでの手続きや撮影時のサポートまでトータルにサポートしてくれるサービスです。
コストはかかりますが、ロケに関するさまざまな手続きを行ってくれるため、土地勘のない場所でも安心してロケを行えます。
3. ロケ地の情報収集をする
ロケ地候補が決まったらそこが撮影可能か、撮影に必要な条件などはあるかなどの情報収集をします。場面別の情報収集方法を以下でご紹介しましょう。
公園や運動場などの公共施設|撮影許可申請の方法をチェック
公園や運動場など一般的な公共施設の場合は、撮影許可申請の方法を確かめておきましょう。公共施設の場合は、ホームページに撮影許可申請に関する記載がないか、まずはホームページで確認し、分からない部分は電話やメールなどで確かめる必要があります。
場所ごとに「撮影日の2週間前に申請書を提出する必要がある」など、ルールが異なるので注意が必要です。
学校や病院などの施設|ややハードル高め
学校や病院などのプライバシー保護が関連する施設の場合は、撮影許可のハードルがやや高いとされています。まず撮影協力が可能か連絡をしてみましょう。
レストラン・カフェなどの店舗|情報誌やネットでチェック
レストランやカフェなどの施設は、営業時間内での撮影は許可が下りにくいため、営業時間外での撮影になることが多い場所です。また、ランチやディナーの間など時間の制約があるケースもあります。
まずは電話で連絡をとり、撮影に必要な内容を確認しておきましょう。
撮影スタジオ|写真や間取り図などでイメージを確認
コンセプトに合った撮影スタジオを探すときは、はじめにスタジオ検索サイトやスタジオのホームページを確認するとよいでしょう。サイトにはスタジオの写真や間取り図などが掲載されていることが多く、具体的に全体の雰囲気を把握しやすいです。
また、撮影スタジオのサイトには利用料金が記載されていることも多く、事前に予算と釣り合うかどうかを確認できます。撮影予定日の料金がどのくらいなのか、前もってチェックしておきましょう。
4. 撮影日・時間を決める|撮影可能かチェック
ロケ地が決まったら、撮影日や時間を決定しましょう。天気・日の入りの時間などをチェックして最適な撮影日を決めます。季節によって、日の入りや日の出、暗くなるタイミングなどが異なります。
撮影には光が重要なポイントなので、ベストな状態で撮影に臨めるように、現場の明るさや天気などを確認しておいてください。
さらに、ロケ地候補として挙げた各場所が、自分たちの希望する日時で撮影可能かどうかをチェックしましょう。あわせて、そのロケ地での撮影に対する条件・撮影に使える時間・利用料金なども確認しておくことが大切です。
5. 当日のスケジュールを作成する|移動時間も含めて計画
当日のスケジュールも立てなければなりません。前項とも関連しますが、ロケ地の利用できる日時を考慮し、撮影前後の準備や片づけの時間も含め、早朝や夜間などベストなタイミングで撮影できるように計画することが重要です。
移動にかかる時間などを計算せず漠然としたスケジュールを立てていると、予定が狂ってしまう可能性があります。スタッフの集合場所や移動時間などもしっかり確認したうえで、撮影時間を確保しましょう。
ロケハン当日の持ち物
ロケハンでは、当日のスケジュールやシナリオを作成するために、当日と同じ状態でロケ地を確認することが大切です。そのため、撮影に使用するカメラや絵コンテなど、基本的に撮影本番に使用するものを持っていきます。
- 撮影本番で使用するカメラ
- 絵コンテ
- メジャー
- スマートフォン
ロケハンは、撮影当日のシナリオをを作成するため、当日と同じ状態が必要です。そのため、撮影当日も使用するカメラを持っていき、テスト撮影をしましょう。
メジャーは小道具を作成する場合、サイズを測るのに役立ちます。さらにスマートフォンがあれば、雨雲レーダーを確認したり、交通手段を確かめたりするのに便利です。また、簡易に現場を撮影してイメージを共有できます。そのため、充電が切れないようにモバイルバッテリーなどを持参しましょう。
上手なロケハンのやり方やポイント
ロケハンは、本番の撮影が成功するためにさまざまなことを下調べします。では、ロケハン当日はどんなポイントに気をつけ、どのような動きをすればいいのでしょうか。ここでは、ロケハンがうまくいくためのコツをご紹介します。
1.複数人で行う
ロケハンは、原則として1人ではなく複数人で行います。複数で行えば、撮影当日の動きをその場で共有できるためです。さらに、複数人のほうがよりシナリオの精度が上がり、撮影当日の動きがスムーズになることが期待できます。
人物を被写体として撮影する場合は、被写体を想定した「スタンド」と呼ばれるモデルに代わりに立ってもらうこともあります。スタンドがあれば、撮影時の構図などを決めやすくなって便利です。
2.撮影場所・環境をチェックする
撮影場所の広さなどの基本的な情報はもちろん、屋内の場合、控室や備品などもチェックします。撮影場所の広さは、被写体との撮影距離や構図などを確認するために必要です。さらに、撮影で使える備品、控室の位置、控室に入る人数なども確認しておきます。
また、撮影場所に当日急な不都合が出た場合、代わりに使える場所があるかどうかもチェックしておきましょう。室内で撮影する場合は、周辺に同様の施設などがないか調べておくのもおすすめです。
電源の位置なども確認しておき、場合によっては延長コードの持ち込みも検討しましょう。
周辺の環境や施設もチェック
撮影当日に急な買い出しの必要が出たときなどのため、周辺にコンビニなどの店や施設があるか、あわせて確認しておくと安心です。
3.駐車場・搬入口を確認する
機材搬入やスタッフの出入りにかかわる、駐車場や搬入口もチェックします。大きい機材を持ち込む場合には、通れるかどうかも確認しなければなりません。
スタジオやロケ地に備え付けの駐車場がある場合、使用許可はどうとればいいのか、どの程度の大きさで何台程度駐車できるかを確認しておきましょう。
駐車場がなければ、周辺にコインパーキングなど車を停められる場所はあるか、ロケ地からそこまでの移動距離・時間はどのくらいかなどのチェックも必要です。一度、どのような道なのかを歩いて確かめておくと安心できます。
4.撮影を行う
ロケハンの際には、ここまでの項目についてチェックしつつ、撮影も行います。そこで、撮影時のポイントを4つに分けて解説しましょう。
光の入り具合
撮影を行う際、光は非常に重要な要素です。ロケ地においては、光が取り込める場所や、時間帯による光の入り具合の違い、遮光の可否などを念入りに確認しなければなりません。
ロケ地で使える照明機材がある場合はチェックし、状況によっては、適切な照明機材の持ち込みも必要です。
音環境・音響チェック
音のチェックも大切です。外からの雑音、その場での音の響き具合などを確認しましょう。いくら見た目がよいロケ地でも、虫の声がうるさい・工事の音が聞こえるといった、現地に行って確認しないとわからないこともあります。
物の配置や背景の確認
ロケ地の場所によっては、家具などが置かれていることもあります。物の配置を確認し、撮影画面に入れたくない場合に移動させられるかどうかなどもチェックしておきましょう。
さまざまな角度から撮る
ロケハンでは、いろいろな方向から撮影してみることも大切です。事前にインターネットなどで得た情報では気づかなかった点に気づける可能性があります。本番をイメージしつつ、画角も意識しましょう。
5.現地に行っていない人に提示できる資料を持ち帰る
ロケハンは、本番の撮影に使用するロケ地を決定するために行うものです。
ロケハン後に複数の候補地のなかから絞るため、「いいロケーションだった」という主観的な感想だけでなく、現地に行けなかった人にも客観的な判断材料となるような映像・音・写真などを持って帰ることが重要です。
上手にロケハンを行えば撮影本番も安心!
ロケハンには下調べや下見という意味があり、本番と同じ条件で下見をすることで、本番の撮影をスムーズに行えるようになります。撮影を成功させるには、しっかりとしたロケハンが欠かせません。
ロケハンを行う際には、事前準備や持ち物を整えることも大切です。さらに、ロケ地・周辺環境の念入りなチェックや、本番を想定した撮影を行うことなども重要であることがわかりました。
今回紹介したポイントを押さえて万全の態勢でロケハンに臨み、よいロケ地に出会って完成度の高い撮影を行いましょう。