オンライン配信
オンライン配信で行うヴァーチャル株主総会とは? 開催の流れと注意点を紹介
さまざまな社内行事やイベントなどがオンライン形式で行われるようになり、株主総会がオンライン配信されるケースも増えてきました。
これまでリアル対面で開かれていた株主総会をオンラインで開催する場合、従来とはどのような違いがあるのでしょうか。今回は、オンライン株主総会について、メリットや注意点、開催方法などを解説していきます。
ヴァーチャル株主総会とは?
ヴァーチャル株主総会とは、インターネットを介してオンライン配信で株主総会を行うことです。企業はWeb上のシステムやサイトを通じて株主総会を配信し、株主は会場に行くことなく傍聴できます。
ちなみに、ヴァーチャル株主総会の開催については、新型コロナウイルスの流行以前である2018年から、海外に住んでいる人も株主総会に参加できるように、ということで議論されていました。
その後、2020年に経済産業省から開催についてのガイドラインが発表され、実施されるようになったのです。
ヴァーチャル株主総会のメリットとは?
ヴァーチャル株主総会には、さまざまなメリットがあります。
どのような点か、例を挙げると
- インターネットがあれば全国どこからでも参加できる
- ウイルス感染の不安がない
- リアル開催に比べてコストを削減できる
- 労働人口減少による人材不足対策になる
などです。
このように、オンライン配信による株主総会には多くのメリットがあるので、今後ますますニーズが高まると予想されます。
ヴァーチャル株主総会にはどんな形式があるの?
ヴァーチャル株主総会の形式には種類があります。どんなものがあるのかを取り上げましょう。
1. ハイブリッド型|オフライン会場で実施+配信
1つ目は、ハイブリッド型のヴァーチャル株主総会です。オンライン配信とオフライン会場での開催をかけ合わせた方法で、2つのパターンがあります。
ハイブリッド参加型
ハイブリッド参加型では、オフライン会場に来場する株主は通常の権利を持っています。一方、オンラインで参加する株主は、企業の許可を得たうえで株主総会の「傍聴」のみを行う形式です。動議などを行うことはできません。
ただし、例外として、質問コメントを取り上げてもらうことが可能な場合もあります。
ハイブリッド出席型
ハイブリッド出席型でも、オフライン会場に出席している株主の扱いは通常通りです。ハイブリッド参加型との違いとして、オンライン参加の株主も傍聴だけでなくオフライン出席者と同等の権利を持ち、質問や議決権行使ができる形式です。
2. ヴァーチャルオンリー型|配信のみ
ヴァーチャルオンリー型とは、オフライン会場を用意せず、オンライン配信のみで株主総会を行う形式です。
以前は法律によって株主総会の「場所」を定めなければならないことが規定されており、オンラインのみでの開催は不可能でした。
しかし、2021年の経済産業省の発表により、所定の条件を満たした上場企業には、ヴァーチャルオンリー型の株主総会の開催が認められるようになったのです。
開催に必要な要件とは?
ヴァーチャルオンリー型の株主総会を開くには、以下の4つの要件を満たさなければなりません。
- 「上場会社」であること
- 「省令要件」該当性について経済産業大臣及び法務大臣の「確認」を受けること
- 「定款の定め」があること
- 招集決定時に「省令要件」に該当していること
詳しくは、経済産業省の制度説明資料(※1)をご覧ください。
ヴァーチャル株主総会開催の流れを紹介
ここからは、ヴァーチャル株主総会を開催するときの手順について解説していきます。
1. オンライン配信に必要な環境を整える
まず、オンライン配信のための環境を準備しましょう。
- カメラ・マイク・照明などの必要な機材を揃える
- 適切な通信を行えるインターネット環境を用意する
- セキュリティ対策を考慮したうえで配信用のプラットフォーム(システム)を決める
といったように、配信に必要な道具や環境を整えます。質疑応答や議決権行使ができる環境も必要です。
2. 招集通知や開催の案内を送付する
次に、株主に対して株主総会の招集通知を送付します。
オンラインでの参加・出席者には、株主総会を配信するURLやパスワード、議決権行使や動議などに関する説明、オンラインでのルールや注意点など、オフライン出席者には必要ない情報を伝えることも忘れないようにしましょう。
3. 開催
本番当日、定刻の少し前から配信を始めます。開催前や休憩中には、次の予定がわかる案内画面を準備して共有するなど、オフライン出席者との隔たりをなるべくなくすよう心がけましょう。
ヴァーチャル株主総会開催の注意点とは?
つづいて、ヴァーチャル株主総会を開催する際の注意点と対策を見ていきましょう。
1. 配信トラブル対策を万全に行う
オンライン配信の大きな注意点として、配信トラブルが起こる可能性があることを頭に入れておかなければなりません。株主総会で重要な話をしている最中に、中断されたり音声が聞こえなくなってしまったりしては、株主の信用を失いかねません。
そのため、まずは事前に十分な配信トラブル対策を行っておく必要があります。インターネット環境としては、無線LANやモバイルルーターよりも、有線のほうが通信の安定性が高いためおすすめです。また、高速通信を行うためには光回線を用意するのがベターです。
通信障害に備えて二重のネットワークを用意する方法もあります。また、機材のアクシデントも想定し、サブの機器を用意するなどの備えをしておくことが重要です。
オンラインで参加する株主にも、適切な環境を整えておいてもらうよう周知するとともに、配信トラブルの可能性も伝えておきましょう。
2. 株主の本人確認ができるようにしておく
オンラインでの参加者・出席者に対しては、オフラインに比べて本人確認が難しい部分があります。なりすましなどのトラブルを防ぐため、2段階認証や専用IDの発行など、オンラインでもきちんと株主の本人確認ができるようにしておきましょう。
3. 議決権行使の方法を周知徹底しておく
株主の議決権行使の方法を決めておかないと、トラブルが起きる可能性があります。特にハイブリッド参加型の場合、当日の議決権行使ができません。
前もって書面などで議決権行使を行う・委任状で代理人に依頼するなど、あらかじめどのような方法で行うかを決めておき、オンライン参加者にしっかりと周知しておくことが重要です。
4. 株主の積極的な参加をサポートする
株主総会では、各株主に積極的に参加してもらい、経営に関する建設的な討議を行うことが重要です。しかし、大勢の株主がオンラインで参加する場合、貴重な意見を取りこぼす可能性もあります。
せっかく参加している株主からの質問や意見を見落とさないように、専用の質問フォームを設置する、テキストで質問できるようにするなどの配慮が必要です。
質問の取り扱い方法も決めておこう
株主から寄せられた質問・意見のうち、総会で取り上げる内容は議長の采配による部分も大きいため、質問の扱いについてルール化しておくことが大切です。また、株主からの敵対的な質問などに備え、質問回数や文字数などの制限を設けることなどの対策も行いましょう。
5. サポートスタッフを置く
万が一の配信トラブルなどに備えて、機材や通信環境の扱いに長けたサポートスタッフを配置しておくことも重要です。株主総会のような会社の重要イベントをオンライン配信するにあたって、配信に慣れていない素人ばかりでは不安が募ります。
社内に適役がいない場合は、外部業者に委託する方法もあります。経験豊富な熟練のサポーターがいれば、通信障害や機材トラブルが発生した場合も即座に対応してもらえるため、主催者である企業も安心して株主総会を行えるのではないでしょうか。
オンラインスタジオからの配信もおすすめ
外部業者といっても、どのようなところに依頼すればいいのかわからないという企業もあるかもしれません。そこで、プロのスタッフによるオンライン配信のサポートが受けられる、レンタルスタジオの利用を提案します。
場所のみを提供しているスタジオもありますが、場所だけでなく通信環境・機材・専任スタッフまで用意して配信をトータルサポートしてくれるスタジオもあります。自社の状況に応じて利用してみてください。
なお、オンライン配信スタジオに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:オンライン配信スタジオとは? 利用するメリットと選び方を解説|自社でスタジオを準備するには
自社に合った開催形式を選んでヴァーチャル株主を実施しよう!
オンライン配信によって開かれるヴァーチャル株主総会は、コストを軽減できる・どこからでも参加できて感染リスクを減らせるなど、主催者にも、参加者である株主にもメリットがあり、注目が高まっている開催方法です。
リアル会場とオンラインのハイブリッドで行う株主総会では、参加型と出席型の2パターンがあるので、開催手順や注意点も考慮しながら自社に合った形式を選んで実施しましょう。一定の規模の企業なら、完全オンラインでの開催も可能です。
なお、オンライン配信スタジオのKOUTENは、配信に適した通信環境や機材を整備しており専任スタッフも配備するため、株主総会の配信会場としてもおすすめです。
オンライン配信による株主総会に慣れていない企業や、プロによる配信サポートを受けたい企業は、利用を検討してみてはいかがでしょうか。
参考URL
※1:産業競争力強化法に基づく場所の定めのない株主総会 制度説明資料